小説ア・ラ・カルト 〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

季節と気分に合わせた読書&映画鑑賞の提案

小説-季節で選ぶ-冬におすすめの小説

節分におすすめな鬼の本 ノワール(黒)編

一塊の鬼火が崇徳院の膝元から燃え上って、山も谷も真昼のように明るくなった。その光の中で、よくよく院のご様子を拝見すると、お顔は朱を注いだように赤く、雑草の様な髪は乱れて膝までかかり、白眼をつり上げて、熱い息を荒々しく吐き出すご様子がいかに…

節分におすすめな鬼の本 ブラン(白)編

まめまきの おとを ききながら、おにたは おもいました。 (にんげんって おかしいな。 おには わるいって、きめているんだから。 おににも、 いろいろ あるのにな。 にんげんも、 いろいろ いるみたいに) ( ポプラ社「おにたのぼうし」あまんきみこ・著 …

聖夜に森を彷徨う可憐な兄妹の運命は・・・。「水晶」 アーダルベルト・シュティフター 著

ほら穴の内側は、一面に青かった。この世のどこにもないほどに。それは青空よりもはるかにふかく、はるかに美しい青さであった。いわば紺青の空色に染めたガラスを透してそとの光がさしこんでくるような青さであった。( 岩波文庫「水晶」シュティフター・著…

間諜(スパイ)VS 防諜(スパイ殺し)「十二月八日の幻影」 直原冬明・著

「当然です。諜者は功を語らず。諜報員の作戦が白日の下に晒されるのは、正体がばれたときです。それは、作戦が失敗したことを意味します。成功した作戦は歴史の闇のなかへと消えていくだけです」 (光文社「十二月八日の幻影」直原冬明・著 42頁より) ど…

児童書と侮るなかれ 格調高い英国ゴシックホラー「モンタギューおじさんの怖い話」クリス・プリーストリー著

なぜか、おじさんの家へ行くときに、森の木々が葉をつけていた記憶がない。あの森をぬけていくときは、いつも寒くて、霜がおりているか、雪がふっていたような気がする。葉といえば、地面の上でくさりかけている枯れ葉以外、見たおぼえがないのだ。( 理論社…

海鳴りと松風、月さやかな夜道、三味線弾きの女姿・・・。「母を恋うる記」谷崎潤一郎・著

母の懐には甘い乳房の匂が暖かく籠っていた。 ・・・・・・・・・ が、依然として月の光と波の音とが身に沁み渡る。新内の流しが聞こえる。二人の頬には未だに涙が止めどなく流れている。 私はふと眼を覚ました。 ( 新潮文庫「刺青・秘密」谷崎潤一郎 著 2…

チョコレートは甘くほろ苦いだけ?小説「ショコラ」ジョアン・ハリス 著

「でも、人生は祝福するべきものだわ。そのすべてを。つまり、その最後さえも。」 わたしは、ホットプレートに載ったポットを手にとって、ふたつのグラスにホットチョコレートを注いだ。 ( 角川書店「ショコラ」ジョアン・ハリス著 231頁より) バレンタイ…

冬の港町。幻想的でノスタルジックな二少年の冒険譚を。「三日月少年漂流記」長野まゆみ 著

「寒くなったな、夜天(そら)が落ちてきそうだ。」 「夜天(そら)が、星ぢゃないのか。」銅貨が訊き返すと、 「夜天だよ。今にも留め金が外れて天井板のように落ちてきそうなほど凍ってる。」 ( 河出書房新社「三日月少年漂流記」長野まゆみ・著 74頁よ…

日本の正月の陰を描く小説「一月一日(いちがついちじつ)」永井荷風 著

「金田か、妙な男さね。日本料理の宴会だといえば顔を出した事がない。日本酒と米の飯ほど嫌いなものはないんだッていうから・・・」 「お分かりになりましたろう。私の日本料理、日本酒嫌いの理由(いわれ)はそういう次第です。」 岩波文庫「あめりか物語…

木枯らし1号が吹く頃になったら、じんわり沁み入る冬の絶品短編集を。「季節風*冬 サンタエクスプレス」 重松清 著

「もしもなっちゃんが「早く帰りたい」と言うのならせめて途中で『ひかり』に乗り換えよう、と携帯電話で時刻表を調べかけた、そのときー。 「ねえ、パパ・・・・・・ サンタさん」 なっちゃんが言った。 「はあ?」 「トナカイさんも、ホームにいるよ」 ( …

雪原のロシア辺境地で繰り広げられる一青年の冒険譚を。「大尉の娘」アレクサンドル・セルゲーエヴィチ・プーシキン著

「じゃ行って来い、ピョートル。いったん忠誠を誓ったら、その人に忠勤を励むんだぞ。上官の言うことをよく守れ。上官の機嫌をとるじゃないぞ。勤務の上で出しゃばるな、また勤務をずるけるな。それからこのことわざを覚えとけ -おろしたてから着物を惜しめ…

稀代の名手によるゴシックホラー短編集 「幽霊」イーディス・ウォートン 著

夢を見ていたに違いないと思い始めましたが、壁に下がった呼び鈴を見ると、まだ揺れているではありませんか。 (作品社「幽霊」イーディス・ウォートン著 145頁より) ハロウィーンからクリスマスあたりの、夜が長くなる季節になると繰り返し読みたくなる…

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