小説ア・ラ・カルト 〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

季節と気分に合わせた読書&映画鑑賞の提案

冬の港町。幻想的でノスタルジックな二少年の冒険譚を。「三日月少年漂流記」長野まゆみ 著

 

「寒くなったな、夜天(そら)が落ちてきそうだ。」

「夜天(そら)が、星ぢゃないのか。」銅貨が訊き返すと、

「夜天だよ。今にも留め金が外れて天井板のように落ちてきそうなほど凍ってる。」

河出書房新社「三日月少年漂流記」長野まゆみ・著 74頁より)

 

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 ご紹介する小説は、長野まゆみさんの「三日月少年漂流記」です。

 

 

 

 目次

 

・「三日月少年漂流記」キーワード

・あらすじ

・味わいポイント

 ノスタルジックな冬の港湾都市を舞台にした二少年の冒険

・余談ですが・・・

   「 三日月少年漂流記」× 「 港町横浜」

 

 

 

「三日月少年漂流記」( 長野まゆみ・著)キーワード

 

 路面電車 レトロ

 

模型人形 博物館 

ノスタルジック

倉庫 百貨店

港湾都市   

 

 

 あらすじ

 

校内でも石炭ストーブを入れるようになった冬のある日。水蓮の父が館長をしている博物館から模型人形の三日月少年が盗まれた。クラスでもその話で持ちきりの中、銅貨は水蓮から、三日月少年は自分が仕掛けたニッカド電池の所為で“逃亡”したのだと告げられる。二人は三日月少年を追って路面電車で、港湾都市Z市へ向かう。

同時収録に「 カレイドスカフⅠ 」「銀色と黒蜜糖」。

 

三日月少年漂流記 (長野まゆみEarly Works少年万華鏡)

三日月少年漂流記 (長野まゆみEarly Works少年万華鏡)

 

 

 

 

 

味わいポイント

 

ノスタルジックな冬の港湾都市を舞台にした二少年の冒険

夏におすすめの小説に、長野まゆみさんの夏至祭」を紹介しましたが、実はいける作家さんです。

 

 

あの、レトロノスタルジック流麗なのにどこか無機質幻想的な世界観は、とした雰囲気にぴったりです。

 

「コオクスと火種用の油の匂いが教室に立ち込める。この匂いは冬の印だ。」(本文10頁より)

 

「店の外では、ちょうど瓦斯燈係が街路を点燈して歩いていた。朱色に燃えるほのおは冷気を吸って一層鮮やかに輝く。」(本文65頁より)

 

「一階の展示室は海側の一面が全て玻璃張りで、港に点る船の燈や埠頭を照らす夜間照明の光が床に反射する。沖合に停泊した船の探照燈は闇を切り開いて旋回し、月の照らす水面は鉛色の波をたてていた。」(本文78頁より)

 

「窓から差しこんでくる月あかりが展覧館の内部を海中のようにゆらヽと浮かびあがらせる。大理石の柱は水影を映し、海月のように漂う。振り子時計の音が展示室の何処からか響いていた。」(本文82頁より)

 

「見上げている銅貨の目の中に雪が飛びこんでは溶け、真っ白い水鳥の羽のような雪が頭上から次々と降りかヽってくる。飛行船は雪雲をめざして上昇を続けた。」(本文97頁より)

 

夏至祭」に負けず劣らずのレトロ・ノスタルジック・無機質・幻想感ですが、キリッと冷えた空気の中では、より一層冴えわたります

更に「 夏至祭」と大きく異なるのは、水蓮と銅貨の二少年の冒険譚である点です。

水蓮と銅貨は逃亡した三日月少年を追って港湾都市Z市を目指し、始発の路面電車に乗り、百貨店を駆け抜け、閉館後の博物館に忍び込み、埠頭の倉庫を見張り、三日月少年の秘密を目の当たりにします。

水蓮と銅貨の冒険ロマンあふれる活躍と、模型人形だった三日月少年が、次第に本当の姿を現してくる様は、キンと冷えた雰囲気によって、より一層際立たちます

 

空気が凍りそうなほどキリッと冷えて冬本番になったとき、あるいはどうしようもなく幻想的・ノスタルジックな気分に浸りたいときに味わってみてはいかがでしょう。

 

 
 
余談ですが…

「 三日月少年漂流記」 × 「 港町横浜」

 

本作の舞台、港湾都市Z市。架空の都市ですがブログ主は読んだ瞬間、横浜を思い浮かべました。

横浜でこの物語の世界を探してみるのも好きです。

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