小説ア・ラ・カルト 〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

季節と気分に合わせた読書&映画鑑賞の提案

小説-気分で選ぶ-幻想的な小説が読みたい

梅雨におすすめな小説特集①「観画談」幸田露伴・著

今行くよーッと思わず返辞をしようとした。途端に隙間を漏って吹込んできた冷たい風に燈火(ともしび)はゆらめいた。船も船頭も遠くから近くへ飄(ひょう)として来たが、また近くから遠くへ飄として去った。唯(ただ)これ一瞬の事で前後はなかった。 屋外…

節分におすすめな鬼の本 ノワール(黒)編

一塊の鬼火が崇徳院の膝元から燃え上って、山も谷も真昼のように明るくなった。その光の中で、よくよく院のご様子を拝見すると、お顔は朱を注いだように赤く、雑草の様な髪は乱れて膝までかかり、白眼をつり上げて、熱い息を荒々しく吐き出すご様子がいかに…

聖夜に森を彷徨う可憐な兄妹の運命は・・・。「水晶」 アーダルベルト・シュティフター 著

ほら穴の内側は、一面に青かった。この世のどこにもないほどに。それは青空よりもはるかにふかく、はるかに美しい青さであった。いわば紺青の空色に染めたガラスを透してそとの光がさしこんでくるような青さであった。( 岩波文庫「水晶」シュティフター・著…

海鳴りと松風、月さやかな夜道、三味線弾きの女姿・・・。「母を恋うる記」谷崎潤一郎・著

母の懐には甘い乳房の匂が暖かく籠っていた。 ・・・・・・・・・ が、依然として月の光と波の音とが身に沁み渡る。新内の流しが聞こえる。二人の頬には未だに涙が止めどなく流れている。 私はふと眼を覚ました。 ( 新潮文庫「刺青・秘密」谷崎潤一郎 著 2…

透き通るほど美しく哀しい不朽の名作 「銀河鉄道の夜」宮沢賢治・著

するとどこかで、ふしぎな声が、 銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うといきなり眼の前が、 ぱっと明るくなって、 まるで億万の蛍烏賊の火を一ぺんに化石させて、 そら中に沈めたという工合 ( 新潮文庫「新編銀河鉄道の夜」宮沢賢治・…

春の宵に、一瞬にして永遠なる恋のお話しはいかが? 「愛の手紙」ジャック・フィニイ 著

「信じてください。ぼくは、きみがこれを読む八十年もあとの時代に実在し、生きているのですー。きみと恋に落ちたことを、心の底から信じながら。」 (ハヤカワ文庫「ゲイルズバーグの春を愛す」ジャック・フィニイ 著 207頁より) 春本番になって、寒の戻り…

冬の港町。幻想的でノスタルジックな二少年の冒険譚を。「三日月少年漂流記」長野まゆみ 著

「寒くなったな、夜天(そら)が落ちてきそうだ。」 「夜天(そら)が、星ぢゃないのか。」銅貨が訊き返すと、 「夜天だよ。今にも留め金が外れて天井板のように落ちてきそうなほど凍ってる。」 ( 河出書房新社「三日月少年漂流記」長野まゆみ・著 74頁よ…

夏の始まりに、レトロで幻想的な「現代版・雪渡り」はいかが?「夏至祭」長野まゆみ・著

今夜は秘密を持つ夜にふさわしい月が出ている。まもなく北西の地平に沈むところだ。天蓋は群青に澄み、ゆっくりと回転しはじめた。 ( 河出書房新社「夏至祭」長野まゆみ・著 22頁より) ご紹介する小説は、長野まゆみさんの「 夏至祭」です。 目次 「 夏…

プライバシーポリシー ①当サイトに掲載されている広告について; 「小説ア・ラ・カルト~季節と気分で選ぶ小説(時々映画)~」は、 Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって、サイトが宣伝料を獲得できる手段を 提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムであるAmazonアソシエイト ・プログラムの参加者です。 ②当サイトに記載されている広告について; 当サイトでは、Amazon.co.jpアソシエイトの広告サービスを利用しています。 このような広告配信事業者は、ユーザーの興味に応じた商品やサービスの広告を表示 するため、当サイトや他サイトへのアクセスに関する情報「Cookie」を使用すること があります。 ③免責事項; 当サイトに記載する情報は記事公開時点の正しいものを提供するよう努めています。 ただし、提供している情報、リンク先などにより、いかなる損失や損害などの被害が 発生しても当サイトでは責任を負いかねます。 ④著作権について; 当サイトに存在する、文章・画像等の著作物の情報を無断転載することを禁止します。