小説ア・ラ・カルト〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

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間諜(スパイ)VS 防諜(スパイ殺し)「十二月八日の幻影」 直原冬明・著

「当然です。諜者は功を語らず。諜報員の作戦が白日の下に晒されるのは、正体がばれたときです。それは、作戦が失敗したことを意味します。成功した作戦は歴史の闇のなかへと消えていくだけです」(光文社「十二月八日の幻影」直原冬明・著 42頁より)

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どうも。連勤記録が12でやっと途切れて、所属組織を労基法違反で訴えてやりたい今日この頃のブログ主ですw

 

冗談はさておき、日本って軍隊みたいな国だと感じるのはブログ主だけでしょうか。上意下達・集団主義全体主義・思考より規律を重んじる・出る杭は打たれる、こんなところでしょうか。そもそも、小学生の頃から校庭で「回れ~右っ!」だの行進だのをやらされますしね。(何の意味があるんでしょうね、あれ。自分がもし子供を持つことがあったら、思考力が伸びない日本の公立学校の教育は受けさせたくないかも汗)

 

本日、紹介する小説。タイトルの日付からピンとくる人も多いかもしれません。真珠湾攻撃すなわち日米開戦の日付です。しかし、勇ましい軍人や華々しい戦歴、あるいは血塗られた悲哀に満ちた軍記の類ではありません。いわゆる「軍隊」の話ではないからです。開戦間近の気運、水面下の攻防戦。“思考”が何よりものをいう、彼らが担うのは「防諜」。

 

という事で、本日ご紹介するのは直原冬明氏の「十二月八日の幻影」です。

 

 

 

 

 

 

目次

 

  • 「十二月八日の幻影」キーワード
  • 登場人物紹介
  • あらすじ
  • 味わいポイント

  ①乾いた文体と熱量

  ②潮田の葛藤=唯一の感情面?

  ③最終章の俯瞰

 

 

 

 

 

「十二月八日の幻影」キーワード

 

少尉任官 海軍 艦隊 軍令部 暗号辞書 特別班 電気ソロバン オロチ暗号 M209 アメリカ大使館 憲兵隊 暗号解読班 SIS エゴイスト ニイタカヤマノボレ 防諜

 


 

 


登場人物紹介

 

  • 潮田三郎・・・主人公。海軍少尉。艦隊で指揮を執る事を希望している。
  • 渡海宗之・・・海軍軍令部総長直属の特別班所属。26歳の若さで少佐。
  • 大森太郎・・・陸軍大尉。暗号解読班高井戸分室の責任者。
  • 有馬数史・・・陸軍少尉。大森の下で暗号解読の任に就く。
  • 関孝一・・・東京帝国大学教授。高井戸分室にて暗号解読に協力している。
  • 山口重秋・・・東京憲兵隊第2分隊長。特別班に協力する。

 

 

あらすじ

 

昭和16年11月。主人公潮田三郎は1年前に海軍兵学校を卒業し、練習艦航海も終えて無事に少尉に任官された。しかし、艦艇で指揮を執ることを目指している潮田が配属されたのは、艦隊司令部ではなく作戦立案を担う軍令部。それも、回ってくる仕事は翻訳作業ばかり。上官に何度となく転属を願い出るも受け入れられない。しかし、ある日突然、転属命令が下る。やっと念願の艦隊司令部への転属が叶ったと思ったのも束の間、告げられた転属先は軍令部総長直属の特別班だった。

地下室にあるという特別班に向かう潮田。待っていたのは、26歳の若さで少佐の地位にある渡海宗之。彼から告げられた特別班の任務は、間諜(スパイ)から機密事項を守り抜く「防諜」だったー。

 

十二月八日の幻影

十二月八日の幻影

  • 作者:直原 冬明
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/02/18
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

 

 

 

味わいポイント

 

 

①乾いた文体と熱量

 

まず、多くのスパイ小説の例に漏れず、極めて叙事的であり、乾いた文体です。

 

構成する大部分の章は、主人公潮田少尉視点で話が進みます。開戦間近の気運の中、真珠湾攻撃情報の防諜に巻き込まれていく潮田。防諜を担う若き少佐、渡海に見込まれて共に水面下の戦いに身を投じていきます。防諜活動を進めていくうちに、アメリカの暗号文解読を担う暗号解読班の大森や関、憲兵隊の山口といった、別組織とも共同戦線を張るようになります。しかし、彼らと人情レベルで繋がる様な描写はほとんど無く、極めて乾いたドライな雰囲気で、青年群像劇の様な雰囲気はありません。

 

ありませんが、熱量はハンパないです

渡海は潮田の優れた映像記憶能力を買い、潮田は渡海に反発しつつも、渡海の圧倒的先見性・飛躍的思考に従うようになっていきます。暗号解読班は、防諜の意義を理解すると、オロチ暗号の解読に邁進し、憲兵隊の山口も、防諜の一端を担うため憲兵の威力と腕力を以て協力します。

それぞれが特技を持ち寄り、同じ目的を共有した彼らには「任務遂行・作戦成功」以外のものは一切なく、その熱量はハンパないです。

更にアメリカ、イギリス、ソビエト、ドイツなど諸外国の間諜暗躍し、ヒートアップしていく水面下の攻防熱量はページ数に比例して高まっていきます

 

②潮田の葛藤=唯一の感情面?

 

ドライな本作ですが、唯一対照的なのが主人公潮田の葛藤です。

 

潮田はまだ任官されて1年の新米少尉。潮田の目標は戦艦に乗り、指揮官として武功を立てること。しかし、任官された潮田の配属先は艦隊司令部では無く、作戦立案を担う軍令部。しかもアメリカの新聞や雑誌の翻訳作業ばかり。やっと異動が叶ったと思ったのも束の間、異動先は謎の特別班。渡海から特別班の目的が「防諜」である事を聞いても、艦隊指揮の希望を捨てきれず、反発する潮田の心情が度々吐露されますが、渡海はどこ吹く風。この潮田の反発渡海の飄々とした受け流しっぷりが唯一の感情レベルの交流?で、ほんのり笑えます。

 

 

③最終章の俯瞰

 

現代に生きる我々は、12月8日の真珠湾攻撃の顛末は知っています。そして、「アメリカは実は真珠湾攻撃を知っていて、わざと日本に攻撃させ開戦に持ち込んだ」というような声をよくネット上で見かけます。

史実の真相は誰にもわからず闇の中ですが、ネット上の声の大半は「日米」間の域を出ないもの。

しかし本作の最終章は、もっと俯瞰した仮説とその結果導き出された黒幕国を匂わせて締めくくられています。日米のみならず、中国大陸・ソビエト、更にはヨーロッパ各国。それぞれの前線、兵力、配置、国内外情勢・・・。どうしても自国とアメリカの二国しか存在しない日本人的脳内地図が、ババッと一気に世界地図レベルに広げられるような最終章はなかなか痛快です。

 

 

 

 

と、いう事で本日12月8日に因んで、「十二月八日の幻影」 をご紹介しました。

 

本当の黒幕国は一体、どこでしょうか。そして、渡海と潮田の師弟関係(?)の行く末は?複雑な頭脳戦を楽しみつつ、是非、本編でご確認を。

 

 

 

 

 

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