小説ア・ラ・カルト 〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

季節と気分に合わせた読書&映画鑑賞の提案

梅雨におすすめな小説特集①「観画談」幸田露伴・著

今行くよーッと思わず返辞をしようとした。途端に隙間を漏って吹込んできた冷たい風に燈火(ともしび)はゆらめいた。船も船頭も遠くから近くへ飄(ひょう)として来たが、また近くから遠くへ飄として去った。唯(ただ)これ一瞬の事で前後はなかった。 屋外…

春におすすめ出会いの小説③ライバル編「武士道シックスティーン」誉田哲也・著

こいつ、おかしい。すごい変わってる。 でも、どこがだろう。何がだろう。 そういえば、こいつとはここまで、一度も鍔迫り合いになっていない。 もう一度、何本か続けて打ち込んでみる。 メンメン、引きゴテ、メン、引きドウ、コテメンー。 (文春文庫「武士…

春におすすめ出会いの小説②友情編「風に桜の舞う道で」竹内真・著

「この寮で一カ月以上も暮らしてるとさ、受験勉強の仕方を三タイプに分類できるってのが見えてくるな」 「知力でやる奴、気力でやる奴、体力でやる奴、だよ」 「あのさ、僕はどのタイプに入るわけ?」 「アキラの場合は、みんなと違って指向性が見えにくいん…

春におすすめ出会いの小説①友情編「わすれなぐさ」吉屋信子・著

相庭陽子さん。美しい人、飛切りのおしゃれです。軟派の中の女王です。級(クラス)でのニックネームはクレオパトラ、 佐伯一枝さん。これは硬派の大将、まさに全級一の模範生です。ニックネームはロボット、すなわち人造人間ですって、 弓削牧子。これは個…

笑える映画特集

こんにちは。 突然ですがあらためて自分のブログを見返すと、最近映画の記事書いてないなあと思いました。 まあブログ名が『時々映画』なので小説紹介がメインではあるのですが、久々に映画の記事を書きたくなってきました。 ところで、今まで記事にした映画…

春におすすめ別れの小説③教師編「一房の葡萄」有島武郎・著

それにしてもぼくの大すきなあのいい先生はどこに行かれたでしょう。もう二度とは会えないと知りながら、ぼくは今でもあの先生がいたらなあと思います。秋になるといつでも葡萄の房はむらさきに色付いて美しく粉をふきますけれど、それを受けた大理石のよう…

小説スイーツ🌸春

どうも。3連休の浮かれ気分に任せてこんな企画を思いついちゃったブログ主です。 いや、ツイッターでは少し呟いた事があったのですが、本当にやっちゃうのがアホなブログ主ですw 本日も休日出勤。本当このシーズン早く終わって欲しい。ブログ記事の構想も練…

春におすすめ別れの小説②恋愛編「濃紺」幸田文・著

「ぜひこの一足をあなたにはいてもらいたい、そう思って仕上げた。しかし、主人が上物は扱わせてくれないので、自費の材料ゆえ粗末で恥ずかしい。かなりなくせのある木目で、今日のあれとは比べものにならない。気をわるくされやしないかと心配だが、くせが…

春におすすめ別れの小説①家族編 「西の魔女が死んだ」梨木香歩・著

まいは、小さいころからおばあちゃんが大好きだった。 実際、「おばあちゃん、大好き」と、事あるごとに連発した。 そういうとき、おばあちゃんはいつも微笑んで、 「アイ・ノウ」 知っていますよ、と応えるのだった。 (新潮社「 西の魔女が死んだ」13ペ…

弾いたメダルチョコの出る目は表か裏か「銃とチョコレート」乙一・著

「カードをうらがえして確認したまえ」 彼が言った。 カードのうらには、風車小屋の絵が小さくえがかれている。 ぼくは目のまえの人を見あげた。 名探偵ロイズ。彼とのであいは、そのようにおこった。 ( 講談社文庫「銃とチョコレート」乙一・著 63ページ…

ロシア革命・亡命・戦争・法廷闘争・・・。『バレンタインにはチョコレートを』の元祖モロゾフの波乱万丈な伝記2篇

チョコレートを食べなくても、栄養に欠けるわけではない。死ぬわけでもない。それでも口にするのはおいしいからにほかならない。音楽や書物に心遊ばせたり、一杯の紅茶に気持ちをなごませるように、ひとは愉しみをもとめてチョコレート菓子を舌にのせるのだ…

今週のお題「応援」×「読書ブログ」=小説・映画の名言紹介

今週のお題「応援」 どうも。 「そういえば、はてなブログのお題とやらに投稿した事なかったな」なんてしれっと言うブログ主です。 (本当は自由に書くのは好きでも、人からお題を指定されるのが嫌で腰が重かっただけのブログ主ですw 「課題図書」を指定さ…

節分におすすめな鬼の本 ノワール(黒)編

一塊の鬼火が崇徳院の膝元から燃え上って、山も谷も真昼のように明るくなった。その光の中で、よくよく院のご様子を拝見すると、お顔は朱を注いだように赤く、雑草の様な髪は乱れて膝までかかり、白眼をつり上げて、熱い息を荒々しく吐き出すご様子がいかに…

節分におすすめな鬼の本 ブラン(白)編

まめまきの おとを ききながら、おにたは おもいました。 (にんげんって おかしいな。 おには わるいって、きめているんだから。 おににも、 いろいろ あるのにな。 にんげんも、 いろいろ いるみたいに) ( ポプラ社「おにたのぼうし」あまんきみこ・著 …

映画観てきました「さらば愛しきアウトロー」感想

大晦日に「さらば愛しきアウトロー」という映画を観てきました。 正直、「せっかく時間あるし、馴染みの映画館で映画でも観るかあ。」くらいの軽いノリで行きました。いつもは「これ絶対に観たい!!」で、観に行くんですけどね。珍しいです。 あらすじ 80…

君が笑ってくれればそれでいい・・・ 映画「 少女の髪どめ」

「離れた友の、恋の炎で燃ゆるこの心」 「きれいな言葉だね」 「お前さんの心を表したまでだ」 (劇中、主人公と主人公が旅先で出会った老人との会話より) 皆様、こんにちは。年の瀬ですね。いかがお過ごしですか。 ブログ主は27日に仕事納めを迎え、最終…

聖夜に森を彷徨う可憐な兄妹の運命は・・・。「水晶」 アーダルベルト・シュティフター 著

ほら穴の内側は、一面に青かった。この世のどこにもないほどに。それは青空よりもはるかにふかく、はるかに美しい青さであった。いわば紺青の空色に染めたガラスを透してそとの光がさしこんでくるような青さであった。( 岩波文庫「水晶」シュティフター・著…

間諜(スパイ)VS 防諜(スパイ殺し)「十二月八日の幻影」 直原冬明・著

「当然です。諜者は功を語らず。諜報員の作戦が白日の下に晒されるのは、正体がばれたときです。それは、作戦が失敗したことを意味します。成功した作戦は歴史の闇のなかへと消えていくだけです」 (光文社「十二月八日の幻影」直原冬明・著 42頁より) ど…

拝啓、ハイファンタジー様

どうも。一生独身な気しかしないブログ主ですw 独身な気しかしないくせに、本日はちょいちょい子守をしておりました。(甥っ子2人が来ていたため) 上の子は齢4才になりまして、そろそろ本に興味を持ち始めた模様。本棚から子供が興味を持ちそうな本を探…

児童書と侮るなかれ 格調高い英国ゴシックホラー「モンタギューおじさんの怖い話」クリス・プリーストリー著

なぜか、おじさんの家へ行くときに、森の木々が葉をつけていた記憶がない。あの森をぬけていくときは、いつも寒くて、霜がおりているか、雪がふっていたような気がする。葉といえば、地面の上でくさりかけている枯れ葉以外、見たおぼえがないのだ。( 理論社…

描く喜びと愛に溢れていた、とある純朴派画家の物語。映画「しあわせの絵の具 愛を描く人モード・ルイス」

「この手に筆、目の前に窓さえあれば、私は満足です」 (本作主人公モード・ルイス本人の生前の言葉より) 皆様、こんにちは。やっと秋本番になってきましたね。と、いってもこの記事をいざ投稿しようと思ったら台風が通過していき、本日は台風一過で暑くな…

海鳴りと松風、月さやかな夜道、三味線弾きの女姿・・・。「母を恋うる記」谷崎潤一郎・著

母の懐には甘い乳房の匂が暖かく籠っていた。 ・・・・・・・・・ が、依然として月の光と波の音とが身に沁み渡る。新内の流しが聞こえる。二人の頬には未だに涙が止めどなく流れている。 私はふと眼を覚ました。 ( 新潮文庫「刺青・秘密」谷崎潤一郎 著 2…

ちょっと現実逃避したい大人におすすめの喜劇 「かもめ食堂」 群ようこ・著

フィンランドのかもめはどことなく、のびのびとふてぶてしく、また ひょっこりしていた。 このひょっこり具合が、自分と似ているような気がしてきた。 「かもめ・・・・・・、 かもめ食堂・・・・・・、 でいきますか」 ( 幻冬舎文庫「 かもめ食堂」群よう…

甘さゼロ?のスウィーツ×学園ミステリ第2弾「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信・著

「<ティンカー・リンカー>のピーチパイ!白桃を使ってて、とってもとってもおいしいの!」 そしてそのまま、小佐内さんの笑顔は凍りつく。 蒸し暑い夏の日、この瞬間ぼくと小佐内さんの間にしんと冷えた空気が下りてきたのを、ぼくは確かに感じていた。 (…

透き通るほど美しく哀しい不朽の名作 「銀河鉄道の夜」宮沢賢治・著

するとどこかで、ふしぎな声が、 銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うといきなり眼の前が、 ぱっと明るくなって、 まるで億万の蛍烏賊の火を一ぺんに化石させて、 そら中に沈めたという工合 ( 新潮文庫「新編銀河鉄道の夜」宮沢賢治・…

今夏は王道の和テイスト恐怖小説はいかが?「営繕かるかや怪異譚」小野不由美・著

俯いた女は折り目正しく頭を下げた。帯締めに下げた鈴がチリンと鳴った。 「お悔やみを申し上げます」 女ははっきりとそう言った。 ( 角川書店「営繕かるかや怪異譚」小野不由美・著 108頁より) ブログ主の住む関東は、なかなか梅雨が明けない日々です…

モノクロな梅雨時にカラフルな台湾映画を 映画「台北の朝、僕は恋をする」

「若いころは悪さもしたが、恋はいいものだ。」 (劇中、パオさんの台詞より) 6月も半ばに入り、梅雨真っ只中。☂ みなさん、いかがお過ごしですか? 5月まではあんなに青空が多かったのに本当に梅雨入りした途端、ぐずついた空模様ばかり。☂☂☂ なんだか、…

ミステリーの女王自薦の、それはそれは恐ろしいサスペンス 「終わりなき夜に生れつく」アガサ・クリスティー著

「そういうときこそ気をつけないと」フィルポットは言った。 「いわゆる死の予兆(フェイ)というやつですよ。」 (ハヤカワ文庫「終わりなき夜に生れつく」アガサ・クリスティー著 239頁より) 読み終えた時の第一声、「なんて恐ろしい小説だろう。」こ…

春の宵に、一瞬にして永遠なる恋のお話しはいかが? 「愛の手紙」ジャック・フィニイ 著

「信じてください。ぼくは、きみがこれを読む八十年もあとの時代に実在し、生きているのですー。きみと恋に落ちたことを、心の底から信じながら。」 (ハヤカワ文庫「ゲイルズバーグの春を愛す」ジャック・フィニイ 著 207頁より) 春本番になって、寒の戻り…

簡単に言うと元祖ツンデレ?「草枕」夏目漱石 著

襖の音に、女は卒然と蝶から目を余の方に転じた。視線は毒矢のごとく空を貫いて、会釈もなく余が眉間に落ちる。 ( 集英社文庫「 草枕」夏目漱石・著 91頁より) ご紹介する小説は、夏目漱石の「 草枕」です。 目次 ・「 草枕」キーワード ・あらすじ ・味…

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