小説ア・ラ・カルト 〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

季節と気分に合わせた読書&映画鑑賞の提案

春におすすめ出会いの小説③ライバル編「武士道シックスティーン」誉田哲也・著

こいつ、おかしい。すごい変わってる。

でも、どこがだろう。何がだろう。

そういえば、こいつとはここまで、一度も鍔迫り合いになっていない。

もう一度、何本か続けて打ち込んでみる。

メンメン、引きゴテ、メン、引きドウ、コテメンー。

(文春文庫「武士道シックスティーン誉田哲也・著 25ページより)

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こんにちは。ややお久しぶりです。

何やかやとありまして、6月に入ってしまいました。

6月に入ってしまい、「春」と言ってよいか微妙なところですが、引き続き「春におすすめの小説」、最終回の「ライバル編」に入りたいと思います。

ただ、コロナ禍の影響で学校の入学式も遅れているようですから、もしかしたら今がちょうど良い(?)かも知れませんね。

 

ということで、本日ご紹介するのは誉田哲也さんの「武士道シックスティーン」です。

 

 

目次

 ①熾烈なバトルシーン

 ②他人は自分を写す鏡

 ③『好敵手』

 

 

武士道シックスティーン」キーワード

高校女子剣道部

剛 蹲踞  

 不安

好敵手

 

 

登場人物紹介

  • 磯山香織・・・幼いころから兄とともに道場に通い、全中大会では準優勝の 超実力者。「勝つこと」こそが剣道のすべてと考え、新免武蔵を心の師と仰ぐ。剣道の強豪校、東松学園高校に進学する。
  • 西荻早苗・・・もとは日本舞踊を習っていたが、中学から剣道に転向。中学時代はまったくの無名。剣道も含めて何事も「楽しむ」ことがポリシー。東松学園中学からそのまま高校に進学。

 

あらすじ

秋の市民剣道大会。全中大会準優勝の磯山香織は圧倒的強さで勝ち進む。しかし迎えた四回戦で、無名の選手に真正面からメンを取られてしまう。

「次は斬るー」香織はその選手が東松学園中学からの出場であったことから、東松学園高校への進学を決める。しかし進学した高校で再会した因縁の相手、西荻早苗は中学から剣道を始めたうえ大した戦歴も無く、おまけに勝敗に拘らない超お気楽剣士だった!?

武士道シックスティーン (文春文庫)

武士道シックスティーン (文春文庫)

 

 

 

 

味わいポイント

①熾烈なバトルシーン

剣道の試合を「バトルシーン」と表現するのも変かも知れませんが、実際読んでて「あ、バトルシーンだ。」と思ってしまったのだからしょうがない。流れるような、と形容したくなる試合描写が読者を惹きつけます。

 

礼。三歩進んで開始線へ。そして蹲踞(腰を落として相手と向かい合う姿勢)-。

 

「始めッ」の声で始まる試合。間合いを詰める、左右に回る、踏む、飛び退く、打ち込む、払う、引く、抜く・・。

 

振り返って残心をとるー。

挙がる紅か白の旗ー。

 

試合の様子をその場で観ているような、ではまだ足りない。まるで自分が試合をしている様にすら感じてしまうほど映像化して見える臨場感。剣道未経験の読者でもそんな風に見えてくると思います。熾烈にして流れるような試合描写が魅力です。

 

②他人は自分を写す鏡

試合描写もさることながら、W主人公の香織と早苗の成長も素晴らしい本作。

 

冒頭に紹介したこちら。

こいつ、おかしい。すごい変わってる。

でも、どこがだろう。何がだろう。

そういえば、こいつとはここまで、一度も鍔迫り合いになっていない。

もう一度、何本か続けて打ち込んでみる。

メンメン、引きゴテ、メン、引きドウ、コテメンー。

 これは初めて早苗と対戦しているときの香織の心中です。

 

自分とはまったく異なる未知の相手との邂逅(かいこう)。

“こいつは一体何なんだ。”

この自問からすべてが始まるのです。

 

物語は香織パートと早苗パートが交互に織り交ざって進みます。

「剛の香織」「柔の早苗」と表現される二人の性格は正反対。

同じ試合、同じ場面でも二人がそれぞれどんな事を考えているのか、その違いが対比され、際立ちます。

 

互いに正反対だからこそ、自分が浮き彫りになる。相手が自分の“鏡”となる。

 

相手(=鏡)に映してこそ初めて己の姿が見える。香織にとっては早苗が、早苗にとっては香織がそうであることがよく分かる構図になっています。

 

 

 ③『好敵手』

 最初は正反対ゆえに、相手にイラつき自分にもイラつく二人。しかし、徐々に相手を通して自分を見つめ、自分にないものを取り入れて融合していきます。

 

融合していくうちに、実は二人の不安の正体がまったく同じであることが分かります。

 

そしてラスト。二人は運命のいたずらで再び試合上で相見えることとなります。

ぶつかり、融合し、認め合った二人はまさに「好敵手」。

香織と早苗、好敵手となった二人の物語は「武士道セブンティーン」「武士道エイティーン」へと続いていきます。

 

 

 

出会いの春。

この春は是非、至上のライバル小説「武士道シックスティーン」を手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

というところで、3か月近く続けてきた「春におすすめ別れ・出会いの小説特集」を終わりにしたいと思います。

次回からは梅雨入りも間近ということで、雨にまつわる小説特集にしようかなと考えています。今後ともお目をかけていただけると嬉しいです!それでは。

 

 

 

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