するとどこかで、ふしぎな声が、
銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うといきなり眼の前が、
ぱっと明るくなって、
まるで億万の蛍烏賊の火を一ぺんに化石させて、
そら中に沈めたという工合
ブログ主の住む関東は、まだ梅雨が続きそうですが、7月に入り、本格的な夏☀もすぐそこに迫ってきました。
7月といえば、すぐに七夕がありましたね。場所によっては8月の地域もあるとか。
“星祭り”の別名通り、星に彩られ、彦星と織姫の伝説も手伝って、ロマンチックな印象です。
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しかし一方で、星は亡くなった人の魂、という逸話もあります。
今回は言わずと知れた不朽の名作、宮沢賢治(1896〜1933)の「 銀河鉄道の夜」を紹介します。
まだ読んだことの無い方、あるいは読んだことはあるけど最近読んでいない方は、この機会に是非。
「 銀河鉄道の夜」キーワード
貧しく孤独な少年
親友
星空を行く汽車
天の川 はくちょう座 北十字 さそり座 南十字 暗黒星雲 死者
星祭り 川
ほんとうのさいわい
あらすじ
主人公のジョバンニは貧しく孤独な少年。級友たちから、からかわれる事もしばしば。そんなジョバンニの唯一の親友はカンパネルラだけ。
ケンタウロス祭の夜も、級友たちにからかわれ、1人丘の上で泣いていたジョバンニは、気がつくとカンパネルラと2人、夜空を渡る銀河鉄道に乗車していた。2人は乗降する様々な人たちと交流しながら、星空をどこまでも渡っていく・・・。
味わいポイント
星の光も乗り合わせた人々も、どこまでも美しく哀しく・・・
行方の分からない父親の帰りを、病身の母親と待つ貧しい少年ジョバンニは同級生にからかわれ、一人夜の丘の上で泣いていたはずのところを、気がつくと銀河鉄道に乗車しています。そして隣には唯一の親友カンパネルラの姿が。
2人は星空を駆ける鉄道でひたすら先へと進みます。
天の川に沿って、はくちょう座、北十字からさそり座、そして南十字と暗黒星雲へ。
星座と星座の間をいく鉄道沿いにも、無数の金銀砂子の星屑や三角標、シグナルが現れては飛びすさぶように後方へ消えていきます。そしてこの汽車は、2人が向かう進行方向へは進んでも、反対に戻ることはないのです。
ジョバンニとカンパネルラの前に現れる乗降客たち。化石発掘に夢中の大学士や鳥を捕って商いにしているという猟師。大学士も猟師も仕事に懸命ですが、どこかこの世のものではない様な雰囲気を漂わせています。
それが決定的になるのが、次に乗車してきた青年と姉弟。青年が言うには、乗っていた船が氷山にぶつかって沈み、連れの姉弟は彼が助けようとした姉弟との事・・。しかし、他にも多くの子供たちが救命ボートへの乗船を待っているところを押しのけてまで助かろうとは、どうしても思えなかったという青年は、せめて最後の時までこの姉弟と共に居ることにした、と身上を語ります。
銀河鉄道とは、死者たちを天上へ運ぶ鉄道だったのです。
作者宮沢賢治は37歳で夭折し、本作はいわば未定稿の形で残されているため、様々な解釈がある作品。
しかし、正直なところ、世の中で小難しく解釈云々と言われているところは、どうでもよいと思います。ただ星空と人々の、透き通るような美しさ哀しさを味わえばよいと思います。
夏といえば、お盆や終戦記念日があり、亡くなった人に想いを寄せる事も多い季節ですね。今年の夏は、亡くなった人々に想いを馳せて星空を仰ぎつつ、この「 銀河鉄道の夜」を読んでみてはいかがでしょうか。
余談ですが・・・
ジョバンニとカンパネルラが出会った青年と姉弟。乗っていた船が氷山にぶつかって沈んだ、との事でした。もちろんこの船は、かの有名な「タイタニック号」のことです。
やはり日本でも知られるほど、ショッキングなニュースだったんですね。