小説ア・ラ・カルト 〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

季節と気分に合わせた読書&映画鑑賞の提案

ちょっと現実逃避したい大人におすすめの喜劇 「かもめ食堂」 群ようこ・著

 

フィンランドのかもめはどことなく、のびのびとふてぶてしく、また

ひょっこりしていた。

このひょっこり具合が、自分と似ているような気がしてきた。

「かもめ・・・・・・、

かもめ食堂・・・・・・、

でいきますか」

幻冬舎文庫かもめ食堂群ようこ 著 34頁より)

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どうも、 ほぼ毎日(直截に言えば仕事の日)現実逃避したくなるブログ主ですw

今回ご紹介する小説。世知辛い世の中渡ってると、「あ~あ、ちょっと疲れたな。」という時ってありませんか?なんかこう、「嫌な奴が不在で、笑えて、めっちゃ都合が良い世界」の小説があったら引きこもりたい、みたいな。

あるよ😏

 

という事で、今回ご紹介するのは群ようこさんの「 かもめ食堂」です。

 

(逆に、今現在、何かはっきりした目標があって、脇目も振らず何の疑問も持たず邁進しているぞ!・・・という方には不要なものかも知れませんので悪しからず。 )

 

 

 

 

 

目次

  • かもめ食堂」キーワード
  • 登場人物紹介
  • あらすじ
  • 味わいポイント

 ①笑えてエスケープできる大人のためのファンタジー

 ②生きづらさを直視したビターな一面も

 ③でもやっぱり「喜劇」

  • 余談ですが・・・

  

  

かもめ食堂」キーワード

 

フィンランド 食堂  

シナモンロール

 コーヒー

おにぎり 38歳 41歳 50歳 笑い

 

  

登場人物紹介

 

サチエ・・・主人公。38歳。フィンランドの首都ヘルシンキで「 かもめ食堂」を開く

ミドリ・・・41歳。どこかに行ってやろうと地図で指差した先がフィンランドだった

マサコ・・・50歳。介護していた両親が相次いで亡くなり、フィンランド

トンミ・・・かもめ食堂の客第1号の学生

リーサ・・・夫が突然家出してしまい、大荒れの中年女性

マッティ・・・ある事から足を洗いたい中年男性

 

 

 

 あらすじ

 

主人公のサチエは38歳。フィンランドの首都ヘルシンキで「 かもめ食堂」という名の食堂を開業した。メニューはフィンランドの軽食と日本の食事メニュー。その中でもサチエの一押しはおにぎり。

だが、街の人々はなかなか店に入って来ない。そんな中、初めての来店客は日本かぶれの学生トンミだった。彼から「 ガッチャマンの主題歌」の歌詞を全て教えてほしいと乞われるも思い出せないサチエ。「 ガッチャマンの歌詞」で頭がいっぱいのまま街へ出たところ、日本人女性に遭遇。唐突に「 ガッチャマンの歌、知ってますか?」

「はっ?」

ーこれが縁でサチエの家へやって来たミドリは、やがてかもめ食堂を手伝うことに。最初は"偵察”を決め込んでいた現地の人々も、やがてかもめ食堂に入ってくるようになる。空港に荷物が届かないというマサコ、夫が突然家を出てしまったというリーサ、何やらワケありそうな男マッティも店に出入りするようになりー。

 

 

かもめ食堂 (幻冬舎文庫)

かもめ食堂 (幻冬舎文庫)

 

 

 

 味わいポイント

 

 

①笑えてエスケープできる大人のためのファンタジー

 

最初に言ってしまうと、完全なファンタジーだと思います。                 

設定こそ、フィンランドという異国で日本食の食堂を開いたアラフォー女性のお話、といういかにも現実的そうな筋です。が、サチエがフィンランドという遠い異国で食堂を開くことが出来た経済的理由や、ミドリ・マサコが向かう先をフィンランドに決めた決め手などが恐ろしく現実離れしているのです。

その現実離れ具合がどこか面白おかしく、それでいてさらりと自然に描かれているので、ついくすっと笑ってしまう。そんな笑いどころが随所に散りばめられているので、公共の場で読む場合は吹きださないように注意が必要ですw

 

物語も、最初は異国の地でまったく客が入らなかった日本食の食堂が、最終的には地元の人が集まる繁盛店になる、というものですが、間違っても繁盛奮闘記なんて想像しないようにw

現実の飲食店はもっと甘くない世界でしょう。潰さないために奮闘記になるのは当然でしょう。

しかしそこはこのかもめ食堂奮闘なんて微塵もしません

その代わりに描かれるのは、無駄な遠慮も建前もしがらみも無い、自然な交流。日々巻き起こるちょっとした面白い事に笑っているうちに軌道に乗っちゃった、みたいな良い意味での都合の良さ。そんな都合の良さに、たまには身を預けちゃいましょうw

 

 

②生きづらさを直視したビターな一面も

 

 と、ここまでを読むと完全にふわふわとした現実逃避の小説に見受けられるかもしれません。しかし一方で、この作品は生きづらさを直視したビターな部分も織り交ざって形成された作品でもあります。

サチエもミドリもマサコも、いわゆる「若い時期」は通過した独身女性。やれ周囲の目だの親の介護だの相続だのといった問題が現実味を帯びてくる身の上がはっきりと描かれます。現地人のマーサとマッティは共に既婚の中年ですが、家庭に悩みを抱えています。

また、こういった作品に見られがちな、「傷ついた人々が自然の中で癒され再生していく」的な幻想を真っ向から否定する辛口なセリフも。

「自然に囲まれている人が、みな幸せになるとは限らないんじゃないかな。どこに住んでいても、どこにいてもその人次第なんですよ。その人がどうするかが問題なんです。しゃんとした人は、どこでもしゃんとしていて、だめな人はどこに行ってもだめなんですよ。きっとそうなんだと思う」(「本文162頁)

主人公のサチエは自然体でのびやかですが、一本筋を持った女性。度々こちらの背筋が伸びるようなセリフが飛び出します。

 

 

③でもやっぱり喜劇

 

しかし、物語は生きづらさを直視しながらも、彼女たちの生き方に特定の「答え」を見出すわけではありません。種々交々(こもごも)織り交ざって「答え」が無いことを受け入れる・・・。人生のエスケープもビターな部分もゆる~くするん自然体で受け入れて「今」 を生きることにした3人組のラストはやっぱり喜劇

特定の「答え」を無理くり見出そうとしない辺りからしても、やはりこの作品は大人にこそふさわしい作品だと思います。

 

 

 

 現実社会を生きる我々がエスケープできるのは読んでいる間だけかもしれません。でも、そんな時が一時でもあるのは大事かと。

ちょっとお疲れ気味の大人の皆さん、あるいは夏休みが終わって意気消沈気味の学生さんも、一服の清涼剤として、是非どうですか。

 

 

 

 

余談ですが・・・

 

十余年前に映画化もされている本作。なので、知っている方も多いかもしれませんね。映画もなかなか良かったです。映画の方は原作から「ビターな部分」を削ぎ落とした様な、よりお気楽な仕上がりに感じました。

 

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映画公開と同時くらいに、Pascoの超熟パンとタイアップしたCMが流れていたのを思い出しました。あのCM、好きだったな。

 

 超熟CM

 

 

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