小説ア・ラ・カルト 〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

季節と気分に合わせた読書&映画鑑賞の提案

ミステリーの女王自薦の、それはそれは恐ろしいサスペンス 「終わりなき夜に生れつく」アガサ・クリスティー著

「そういうときこそ気をつけないと」フィルポットは言った。

「いわゆる死の予兆(フェイ)というやつですよ。」

(ハヤカワ文庫「終わりなき夜に生れつく」アガサ・クリスティー著 239頁より)

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読み終えた時の第一声、「なんて恐ろしい小説だろう。」これに尽きます。

 

アガサ・クリスティー。言わずと知れたミステリーの女王。しかし、今回は敢えて本格ミステリーというよりはサスペンス色の強いこの作品をご紹介します。

ミステリーの女王はサスペンスの女王でもある。クリスティーの多才さ偉大さは空前絶後だと改めて思わしめてくれた作品です。

 

あなたも、人間心理の恐ろしさを覗いてみませんか。

 

ご紹介する小説は、アガサ・クリスティーAgatha・Chiristie 1890~1976)の「終わりなき夜に生れつく」です。

 

 

 

目次

  • 「終わりなき夜に生れつく」キーワード
  • 登場人物紹介
  • あらすじ
  • 味わいポイント

     見えていた世界が、  ぐにゃりと 歪曲する恐怖

  • 余談ですが・・・

 

 

  

「終わりなき夜に生れつく」キーワード

貧しい青年 恋 結婚  

資産家の娘 

天才建築家 新居 

ジプシー 欲望

呪われた土地 母

 

 

 

登場人物紹介

マイク・ロジャーズ・・・主人公の青年。貧しいがいつか素敵な女性と巡り合い、素敵な家を持ちたいという夢がある

エリー・グートマン・・・大富豪の娘。マイクと出会い、恋に落ちる

コーラ・・・エリーの継母

フランク・・・エリーの叔父

リッピンコット氏・・・エリーの信託管理者

ルーベン・・・エリーの従兄

グレタ・・・エリーの世話係

ロイド氏・・・エリーの財産管理人

クローディア・ハードカッスル・・・エリーの友人

フィルポット・・・村長

リー・・・ジプシーの占い師。マイクとエリーに警告を与える

サントニックス・・・大建築家。マイクの友人

 

 

 あらすじ

 

主人公マイク・ロジャーズは貧しい生まれで、職を転々としている若者。ある日「ジプシーが丘」と呼ばれる土地が競売に掛けられると知る。このジプシーが丘は、住みついた者や関わった者に次々と不幸が降りかかるといういわく付きの土地だった。しかし、マイクはこの土地に魅了され、ここに素敵な家を建てて暮らしたいという望みを持つ。そんな時、ジプシーが丘でエリーと出会い、恋に落ちて・・・。

  

 

終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫)

終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫)

 

 

 

味わいポイント

 

 見えていた世界が、ぐにゃりと歪曲する恐怖

 

主人公のマイクは貧しいながらも「いつか運命の女性に出会って、彼女と素敵な家で暮らしたい。」という望みを持っています。ある日、ジプシーが丘と呼ばれる土地の競売の話を聞きつけます。この土地は持ち主に災いが降りかかる呪われた土地だ、と忌み嫌われていますが、マイクはこの土地に魅了されます。

 

そんな時、丘の上で佇んでいたエリーと出会います。

ゆっくりと恋に落ちていった2人はやがて結婚します。

 

そして、ジプシーのリーばあさんから「あの土地からすぐ離れろ」という警告をされても、2人はジプシーが丘に新居を建てる決意をします。マイクは友人の天才建築家サントニックスに建築を依頼します。

実はエリーはアメリカでも有数の資産家の出身。マイクは一転して大金持ちの夫になったのです。

 

しかし、エリーの両親は既に他界しており、継母のコーラをはじめ、フランク叔父、信託管理者のリッピンコット氏、財産管理者のロイド氏、従兄のルーベンなど、エリーの結婚によって法的影響を受ける人物たちが入れ代わり立ち代わり現れます。が、エリーが心から信頼しているのは世話係のグレタ・アンダーゼンのみ。けれど、マイクは常にエリーと行動を共にしようとするグレタに不快感を示します

そして、事件が起こりますー。

 

 

貧しい出身から一転、大金持ちになった青年。どこか儚げながら実は大資産家の若い女性。そんな若き資産家に関係のある継母、親戚、財産・信託管理者たち。ただ一人、信頼を寄せている世話係の女性。警告を与えるジプシーの老女。天才建築家との呼び声高い青年の友人。新居を構えた地で新たに出来た友人たちと使用人たち。分不相応な結婚に不安を示す青年の母・・・。

 

そして起こった悲劇。

これは、資産と強欲が絡んだ末なのか、それとも本当にジプシーの呪いがなせる業なのか。

もちろん真相は“呪い”なんかではありません。人間の心理は”呪い”よりもよほど恐ろしい

(ある意味この心理に至ること自体が一種の呪いかも知れませんが。)

 

クリスティーはミステリーにおいても、たった一文で場面を転換させ読者をはっとさせるのが上手いです。サスペンス色の濃い本作でもそれが冴えわたっています

 

今まで見えていた世界が突然、ぐにゃり歪曲していって、まったく異なる世界に変わる。

 

それまで疑いもしなかったモノの中にある時、血生臭い赤いものがさっと混ざり、段々と増殖していき、最後には裏切りと狂気で真っ赤に染まるー。

ラスト数ページはじわじわと手汗が滲んでくる様なショックを受ける事必定です。

 

 

 

 
余談ですが・・・

 

 

とある人物の一瞬の違和感を見逃すな?

本作の真相について。

当然、読んでいるときは真相や黒幕は知らずに読んでいましたが、ブログ主はとある人物に微かな違和感を覚えた場面がいくつかありました。今思うと、ヒントとなる事でした。やっぱり勘が大事な時ってあるんですね。

 

 

 

推理要素もあり

 サスペンスが主題の本作ですが、ある2人の人物の死に、軽く推理の要素があります。是非、因果関係を推理してみて下さい。

 

  

 

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