小説ア・ラ・カルト〜季節と気分で選ぶ小説(時々映画)〜

季節と気分に合わせた読書&映画鑑賞の提案

甘さゼロ?のスウィーツ×学園ミステリ「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信 著

「わたし、スタンダードシフォンと、コーヒー」

まずはシフォンで肩慣らしか、と思ったが、

「・・・・・・とミルフィーユとパンナコッタとストロベリーショート」

いきなり全開ですか。

創元推理文庫春期限定いちごタルト事件米澤穂信 著 155頁より)

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🌸春本番になると、春風駘蕩の中、真新しい制服に身を包んだ学生さんを見かけますね。見かける度に、どこか甘酸っぱい感覚に陥ったりします・・・特段、そんな思い出も無かったのに(泣)。

 

こんなシチュエーションが多くなる春には、やはり学園モノはいかがでしょうか。

本作は“春期限定”からわかる通り、季節は高校入学から日の浅い春、入学というからには進学したての初々しい学園モノ、学園モノと相性ばっちりのミステリ、そして「いちごタルト」という名称も手伝って、甘酸っぱい匂いがほんわか漂ってきそうです。🍓🍓🍓🍓🍓

 

が、それはまったくのお門違いです(笑)。春・学園モノ・ミステリ」という三拍子が揃っていながら「甘酸っぱさ」はありません

 

そんな、ちょっとひねくれた ひねくれまくった春の学園ミステリはいかがですか?

 

ご紹介する小説は、米澤穂信さんの「春期限定いちごタルト事件」です。

 

 

 

目次

 ①落差(ギャップ)を楽しむ

  1.スウィーツ×ドライな2人= 

               ズレた笑い

  2.小市民を目指す二人が隠

                した本性

 ②安楽椅子探偵系統ながら終盤は

        ややスリルあり

  • 余談ですが・・・

 

 

 

 春期限定いちごタルト事件」(米澤穂信)キーワード

春におすすめの小説 高校進学 小市民 スウィーツ 

互恵関係 日常の中のミステリ 自転車 狐と狼

 

 

 

あらすじ

 

難関船戸高校の合否発表日。小鳩君と小佐内さんは互いの合格を確認した。小鳩君は改めて、小佐内さんと誓った「小市民たること」を胸に刻む。

小鳩君と小佐内さんは恋愛関係にも依存関係にもない。互恵関係の契約を結んでいる。それはお互いの「本性」を隠して平穏無事な高校生活を送るため。

しかし、高校に進学して日が浅いある日、小鳩君の中学時代を知る熱血漢の堂島から、女子生徒の消えたポシェットの謎解きを頼まれてしまい・・・(羊の着ぐるみ)。

他、「For your eyes only」「おいしいココアの作り方」「はらふくるるわざ」「孤狼の心」の連結短編集。

 

 

 

 

 味わいポイント 

①落差(ギャップ)を楽しむ

1.スウィーツ×ドライな2人=ズレた笑い

「甘酸っぱさ」が無い最大の理由。それは主人公小鳩とヒロイン小佐内の性質。小鳩君も小佐内さんも、両者とも至ってドライです。両者の関係が、読者の望み(?)の通りの甘い方へ転がっていかない点もそうですが、それ以上にこの二人は考え方それ自体がどこか冷めています。他人にもお互いにも、二人はあくまでステマティック。「出る杭は打たれる」にならない程度の礼儀的な人情愛想は見せつつ、面倒事は回避しようとする。すべては「小市民」であるため。

カフェでスウィーツを挟んで会話していながら、二人はどこまでもシステマティック。

それがまるで、甘いふわふわクリームの中から突如コンピューターが出てきた、あるいはコンピューターにぺたぺたと生クリームを塗り付けた様な、何ともズレたギャップを醸しています。絶品スウィーツの描写と、小佐内さんが実に見事にそれらを平らげていくのとで、余計にズレた感が増幅。そのズレが笑いを誘い、テンポよく読めます。

 

2.小市民を目指す二人が隠した本性

もう一つの落差(ギャップ)は、小市民になったはずの二人の本性

小鳩君は適度な愛想と自己主張が薄い性格で、小佐内さんは引っ込み思案と人見知りが人の形を取った様な性格で、それぞれ高校デビューをします。

しかし、実は小鳩君は人より知恵が回るがためにあらゆる事に口を突っ込んでは真相を暴き頭の良さを見せつけたい“狐”、小佐内さんは執念深さと奸計を巡らせる事で、自分に害を加えた相手を叩きのめす”狼”が本性。特に小佐内さんのギャップは相当な落差で、この落差が物語の大きなキーとなります。

 

 

安楽椅子探偵系統ながら終盤はややスリルあり

ミステリとしての本作の位置づけは所謂、日常の謎を扱ったもの。しかも、謎を追って動き回る、というよりは推論を重ねていく様な、安楽椅子探偵系統といえます。

しかし、終盤は短編の連作と見えていた中に、散りばめられていた伏線が収集されていきます。それと同時に小佐内さんの“狼”暴発し、引きづられる様に小鳩君が駆けずり回るハメになり、ちょっとしたスリルが楽しめます。

 

でも、小佐内さんの“狼”の一面は氷山の一角。続編「夏期限定トロピカルパフェ事件」では小佐内さんの全容が露わになり、ちょっとしたスリルどころでは無くなります。

スリル感や伏線の収集感で言えば、“夏期”の方が強いのですが、まあ、のんびりした春にはこのくらいのスリルで収めておいてはいかがでしょう。

 

 

 

「もうすぐ春ですね 恋をしてみませんか」と歌いかけられたら、「いえ、結構です」と即答するが如く、甘酸っぱさとは無縁。そして数々の魅惑的なスウィーツと、それとまったくそぐわない儀礼的無関心な二人が繰り出すズレに笑いつつ、ゆる~い、でも最後にややスリルありの、ライトなミステリはいかがですか。

 

 

 

 余談ですが・・・

 

「春期限定」から始まる本シリーズ。「小市民シリーズ」というシリーズ名が付けられていますが、2019年5月現在、「夏期限定」と「秋期限定」の続編が出ています。「冬期限定」も執筆中だとか。

「春期限定」では恋愛関係にも依存関係にも無い二人ですが、「秋期」のラストではそんな二人の関係性に進展があります。

もしよかったら、続編も是非どうぞ。

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※追記

続編の「夏期限定トロピカルパフェ事件」の紹介記事アップしました。ご興味あればどうぞ。

shosetsu-eiga-alacarte.hatenablog.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

 

 

 

 

   

 

 

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